Coombs陰性AIHA
 AIHAは、自己の赤血球に反応する自己抗体によって、赤血球破壊(溶血)が亢進することにより生じる貧血で
あり、自己抗体の証明は、AIHAの診断に必須と考えられている。赤血球に結合した自己抗体や補体の証明には、
1945年にCoombsらにより報告された赤血球凝集反応に基づいた血清学的手法である直接抗グロブリン試験
(Direct anti-globulin test: DAT; 直接Coombs試験)が広く用いられている。1960年前後からCoombs
試験陰性のAIHAの報告がみられ、AIHA症例の約1〜10%にCoombs陰性AIHAが存在することが知られているが、
まれな病態であることから、臨床背景、診断方法や治療成績についての疫学的研究は行われていなかった。
約10年前より当教室では、Coombs陰性AIHAの診断に有用な赤血球結合IgG定量を行っており、溶血性貧血の
精査を目的に、毎年100例近くの症例が全国から寄せられている。近年は、依頼検体の中でCoombs陰性の溶血
性貧血症例の比率が増加し、精査依頼されたCoombs陰性溶血性貧血の4割がAIHAと診断されている。診断困
難な溶血性貧血症例に未診断のAIHAがかなりの割合で含まれている可能性が推測される。
 直接Coombs試験は、赤血球膜上に一定量以上に結合した免疫グロブリン、あるいは補体が存在すれば、Coombs
試薬の添加により赤血球が凝集し陽性と判定される。免疫性溶血が疑われるが直接Coombs試験陰性を示す場合
は、3つのタイプに分類できる。1つは、低親和性抗赤血球自己抗体であり、直接Coombs試験のために赤血球を調
整する際の洗浄により赤血球から離れてしまうことから、直接Coombs試験が陰性と判定される。対策として低
温の生理食塩水での洗浄が推奨されている。また、ゲル(カラム)では洗浄の必要がないことから低親和性の自己
抗体を検出しやすいが、偽陽性の見られることもある。2つめは、IgAもしくはIgMクラスの抗赤血球自己抗体の
関与であり、直接Coombs試薬中に抗IgAもしくはIgM抗体を含んでいないことが多いことから、直接Coombs試験
陰性と判定される。現在、商業ベースでの抗IgAや抗IgM抗体に対する直接Coombs試薬は存在しないが、フロー
サイトメトリーによる抗IgAや抗IgM抗体を用いた検査法も報告されている。最後は、赤血球結合IgG量がCoombs
試験感度以下の場合である。赤血球結合IgGをRIA法等の高感度法で定量することが診断に有用である。
 当教室での成績から、Coombs試験が陽性となるには赤血球1個あたり250分子以上のIgGが必要であり、健常
人の赤血球上に平均33±13(SD)個のIgG分子が存在している。Coombs陰性溶血性貧血140例において、Coombs
陰性AIHA診断における赤血球結合IgG量の感度・特異度・尤度比を算出し、ROC(receiver operating characteristic)
曲線からカットオフ値を求めると、カットオフ値83以上で感度70%、特異度84%、尤度比4.8であった。2006
年度依頼Coombs陰性症例41例中、治療前の31例についてみると、カットオフ値79以上で感度100%、特異度94%、
尤度比16であった。Coombs陰性溶血性貧血を診る際には、治療前の赤血球結合IgG定量がCoombs陰性AIHA診断
において高い有用性を示すと考えられる。


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